SAGA DX リーダーズ事例藤津碍子株式会社藤津碍子(がいし)株式会社は、創業85年を誇り、全国の電力インフラを支える「碍子」の製造・販売を手掛ける企業です。同社では、高い技術を持つ製造現場のスタッフが、パソコン入力や議事録作成といった「付加価値を生みづらい事務作業」に多くの時間を割いており、本来注力すべき生産業務を圧迫しているという課題がありました。この課題に対し、BottoKが公益財団法人佐賀県産業振興機構 さが産業ミライ創造ベース(RYO-FU BASE)から受託・運営するDX推進プログラム「SAGA DX リーダーズ」にて、経営者向けの生成AI活用講座および実践の場を提供。 プログラムを通じて得られた成果や、製造業におけるDXの意義について、代表取締役社長の円田 圭亮様にお話を伺いました。創業85年。「変わらなければ、守れない」4代目の決意- まずは、御社の企業概要を教えてください藤津碍子株式会社(本社:佐賀県鹿島市)は、電力インフラを支える碍子(がいし)製品の製造・販売を行っている企業です。創業は1941年で、法人化は1948年。創業から数えると85年の歴史があります。祖父が創業し、若くして亡くなった後は祖母が事業をつなぎ、その後父、そして私へと引き継がれてきました。世代としては3世代目ですが、社長としては4人目です。事業の柱は大きく2つあります。1つは、碍子(がいし)の製造です。碍子とは、電気を通さず、電線や設備を安全に支えるための重要な製品で、主に電力インフラを支える役割を担っています。当社では、主に電力業界で使用される碍子を製造しており、電柱に取り付けられる比較的小型の低圧用碍子から、33kVクラスの高圧用碍子まで幅広く製造しています。碍子は電柱だけでなく、高圧機器の部品として使われることもあり、機器メーカー向けにオーダーメイドで製造する製品もあります。もう1つは、電力設備関連機器の商社機能です。電力会社や電気工事会社との長年の取引の中で培ってきたネットワークを活かし、電柱周りに設置される各種機器を、全国のメーカーの代理店として販売しています。- SAGA DXリーダーズに参加したきっかけを教えてくださいもともと、DXやAIといった分野には比較的関心がありました。「できれば効率よく業務を進めたい」という思いがあって、良さそうだなと思うツールがあれば、まず自分で触ってみる、ということは以前からやっていました。BIツールやRPAも、9年ほど前から使っています。BIツールについては、週末に自分で会社のデータを触ってみて、「これは分析しやすいな」と感じたのがきっかけでした。自分で使ってみないと、何ができるのか、どれくらい便利になるのか分かりませんし、コストに見合うかどうかも判断できないと思っています。SAGA DXリーダーズについては、生成AI系のセミナーなどを拝見したのがきっかけだったと思います。学びの場として参加してみようと考えました。(写真:第7回 SAGA DX リーダーズイベントの様子)現場の悲鳴。ものづくりのプロを疲弊させる「事務作業」- 参加当時は、どのような課題感をお持ちでしたか?一番の課題は、会議の生産性でした。会議そのものだけでなく、議事録を作ったり、会議で出たタスクを管理したり、その後のフォローまで含めると、かなりの負担になっていると感じていました。特に製造現場では、ものづくりの技能は非常に高い一方で、パソコンで議事録を作ることが本来の仕事ではありません。文章を書くのが得意な人ばかりではない中で、「ここが分かりにくい」「ここが抜けている」と指摘するのも、お互いにストレスになります。今はツールが発展している時代なので、苦手な作業はツールに任せて、本来やるべき仕事に集中できる環境を作った方が、生産性も上がるのではないかと考えていました。SAGA DX リーダーズ。「他社もやるなら」が号令に- 課題解決につながる出会いやインプットはありましたか?とても有益でした。正直、自分一人で調べようとすると、「どこから手を付ければいいのか分からない」という状態になりがちです。SAGA DXリーダーズでは、実際に経営をされている方々が、どんなツールを使って、どう感じたのかを直接聞くことができました。「みなさんもこんなに使っているなら、うちも試してみようか」と思えたのは大きかったですね。DXや生成AI活用が、特別な企業だけのものではなく、確実に広がってきているという実感を持てました。(写真:会議体を見直し生成AIで効率化する 会議の生産性向上プロジェクトの様子)導入の成果。「確認の手間」が消え、現場に変化が生まれた- 実際に取り組まれたことを教えてくださいまず取り組んだのは、会議とコミュニケーション周りの改善です。電話については、Zoom Phoneを導入しました。社内通話はZoom Phoneへ全面的に切り替えています。電話内容の要約が自動で残るので、「この電話、何の話だったっけ?」という時にすぐ振り返れるのは助かっています。会議については、Zoomの文字起こし機能と、AI議事録ツール(Plaud Note)を並行して試しています。同じ会議で両方の議事録を共有して、「どちらが使いやすいか」を見ている段階ですが、今の感覚ではPlaud Noteの要約精度はかなり高いと感じています。現場からは「こんなことができるのか!」と驚かれることが多かったですね。実際に使ってもらう中で、「これはすごい」「もっと早く広げてほしい」といった声が上がるようになってきました。今後の展望。DXで「人の時間」を取り戻す- 今後の展望について教えてください今後は、議事録の要約やタスク整理といった部分を、さらにAIやツールで支援していきたいと考えています。議事録を作る時間よりも、会議で決まったことを実行する時間に、より多くの時間を使いたいからです。Microsoft 365の全社展開も進めていて、Plannerなどを使ったタスク管理・進捗管理の可視化の取り組みもはじめています。会議 → 要約 → タスク化 → 進捗管理、という流れを自然につなげていきたいですね。最終的には、AIやシステムに任せられる仕事は任せて、人が向き合うべき仕事――現場でしか分からないこと、お客様との信頼関係づくり、判断や創意工夫が必要な仕事に、しっかり時間を使える会社にしていきたいと思っています。便利なツールが増えたからこそ、「人がやるべき仕事は何か」を改めて見つめ直す。DXは目的ではなく、人が本来やるべき仕事に集中するための手段だと考えています。事例企業:藤津碍子株式会社本店住所:〒849-1313 佐賀県⿅島市⼤字重ノ⽊甲245-1事業内容:電力供給に使用する碍子の設計・製造、および配電機材の販売取材にご協力いただいた方:藤津碍子株式会社 代表取締役社長 円田 圭亮 様運営事務局(BottoK)より今回の円田社長の取り組みは、まさにSAGA DX リーダーズが目指す「経営者自身が動くことで、組織が変わる」好例でした。私たちBottoKが本プロジェクトを通じて提供したいと考えているのは、単なるツールの紹介ではありません。経営者が抱える漠然とした「モヤモヤ」を言語化し、本質的な課題へと構造化すること。そして、同じ悩みを持つ経営者同士が刺激し合い、孤独になりがちな決断を後押しする「場」を作ることです。円田社長が「他社もやっているなら」と背中を押され、現場の負担を減らすために迅速に行動された姿には、私たち事務局も大きな感銘を受けました。今後も「考える→決める→動く」の循環を止めず、DXを通じて「人の時間」を大切にする経営を進められることを、心より応援しております。