佐賀県鳥栖市に本社を構える九動株式会社は、実験動物の販売、実験動物用試薬の製造・販売などの事業を展開しています。「どんなに優れた人事制度も、実際に運用する社員たちにかかっていると気づかされた」と語る総務部の宮坂様。BottoKの研修を受講した経緯、その後の変化についてお話を伺いました。社名:九動株式会社(Webサイトはこちら)業種:商社従業員数:97名課題:管理職教育都道府県:佐賀県取材にご協力いただいた方:九動株式会社 総務部 部長代理 宮坂 亮之朗様<目次>九動株式会社についてー宮坂様のプロフィールを、お聞かせください九動株式会社総務部に所属し、部長代理として勤務しております。総務部では経理を含め8名体制の中、主な業務内容としては採用、社員教育、人事関連業務、また労務管理や社会保険関係の承認などもしております。学生時代に大学の教授から「佐賀に九動という会社がある」と紹介され、採用試験を受けたのが入社のきっかけです。大学での専攻が動物分野というわけでもなく、実験動物に触れたこともなかったのですが、まさにご縁あっての入社だったのだと感じています。気づけばここでのキャリアも約12年となりました。ー会社概要について、教えていただけますか?昭和元年に熊本市九品寺で「松永動物店」として創業。社名変更、佐賀県鳥栖市への本社移転などを経て、平成元年より「九動株式会社」となり現在に至っております。創業以来動物を扱い続けてきたという点では、非常に歴史の長い会社だと思います。主な事業内容は、実験動物の販売、実験動物用試薬の開発・製造・販売、各種受託飼育・実験などです。九州圏内での同業他社としては実験動物販売が3社ほど、それとは別に実験動物飼育の受託をしている会社が2、3社。『九州圏内の実験動物の』という事業分野で、実験動物販売・受託実験・実験動物請負飼育を行っているのは、唯一弊社のみとなっております。佐賀県の本社・営業所をはじめ熊本、筑波など各営業所を合わせますと従業員約100名ほどの会社です。2019 年 3 月、日本クレア株式会社グループの一員になり、さらなるサービスの拡充と品質の向上を行っているところです。主なお取引先は大学様などの研究機関。実験動物の販売や生殖工学関連試薬の販売が、売上の大きな柱の一部となっています。抱えていた課題ーBottoKとの出会いについて、教えていただけますか?約2年前、熊本にある実験動物飼育施設でのパート採用で苦労していた頃、BottoKさんと出会いました。当時は、折り込みチラシとハローワークでしか求人広告を出してなかったのですが、業務内容の特殊性と、広告を見て応募する求職者とのミスマッチが起きていました。そんな中、ご連絡を下さったのがBottoKさんでした。そのご縁で、BottoKさん開催の人事評価制度のセミナーを受講しました。他社のセミナーを受講したり、自分なりにWebなどで収集したりしていた情報を的確にまとめられており、大変わかりやすかったです。講義をされていた代表の坂田さんにおかれましては、「知見がとても広く、真っ当なことをお話される方」という印象を抱いたことを、今も覚えています。ー研修を受ける前、どのような問題・課題がございましたか?その頃、人事評価制度に関して課題を感じていました。約10年前に導入された人事評価制度を、ほぼ導入時の様式のまま運用している状況でした。評価シートを社員が作成し、管理職と面談し、必要あればシートを修正する。シートの作成と面談を半年に1回しか実施しない部門がほとんどなんですね。以前所属していた品質管理課(当時)では月に1回ミーティングを開催、「もう少しでAになるから、あと少し頑張ろう!」など、部門内で目標達成に向けての進捗などを確認していました。ところが総務に異動となり全体を見渡したら、そういった取り組みをしている部門がほとんどないことがわかったんです。評価シートについては、「結果(数字)」と「行動」を評価する枠組みになっています。管理職は現場の業務に加え部下の労務管理、データ分析など多くの業務を担っています。「結果(数字)」を評価すると言っても、評価に必要となる部門の戦略、戦術などの策定に十分な時間が取れない、という状況が多々起こっていました。また「行動」については、評価基準に能力や業績など明確な基準がない分、評価者の主観的な要素が影響を及ぼすことが考えられます。評価の一貫性や部門間の評価にばらつきが生じてしまうことに対しても、「これで本当にいいのだろうか」と強く感じていました。その上、評価者からは「評価しにくい」「使いづらい」、被評価者からは「自分たちの仕事が適切に評価されていない」「これなら努力しても変わらない」といった意見が多く出ていた状況。原因は制度が良くないから、運用のやり方がよくないから、と考えていましたし、制度をがらっと変えれば全て改善されるものだと思っていました。ー研修を受けることになった経緯を教えてください社内の人事評価制度や管理職研修などについてご相談していたところ、坂田さんから「そもそも運用する気がないのであれば、制度がどんなに良くなっても意味ないですよ」と言われ、「なるほど!」とひどく納得しました。評価基準や見解の統一、会社の方向性や方針、そのあたりの目線合わせがされていないと、人事評価制度も形骸化していくし不満の温床になっていく。ハーズバーグの衛生要因のお話もしていただきました。もともとは人事評価制度の仕組みやあり方が課題と感じていたのですが、お話ししていく中で取り組むべき優先課題が「管理職の教育」にあることを認識できたことは、自分自身にとっても大きかったです。取り組むべき課題が何であるかを見つめずに、人事評価制度の改善に進んでいたら、ここまで納得感のある取り組みにはなっていなかったと思います。優先すべき課題がはっきりしたことで、サポートいただく具体的な施策がさらに進んでいきました。研修についてー研修の内容を教えてください管理職(特に課長職)に何か知識を習得させるための研修を当初検討していました。しかしその上司がどのように評価したらいいかわからないのでは、との疑問が生まれました。そこで、研修ではなく課長職以上の管理職が参加できるプロジェクトを立ち上げ、その過程で必要な知識などを習得していく、という形になりました。プロジェクトと研修のハイブリッドのような内容でした。参加者は月1回開催の部長会に参加している18名です。昨年6月にスタートして、今年の2月末までの約7ヶ月にわたり実施していただきました。研修に参加して課題などに取り組む。月1回の部長会で経営陣や部長へ報告する、という流れです。会社の強み、弱みなどの洗い出しと分析、課題の把握。その後、経営戦略・施策の立案、経営計画策定などに取り組みました。ー他社の研修なども検討されましたか?管理職研修に関しては、他社情報を集めたり、相場や内容など比較はしていました。決め手のひとつは、経営陣にまでリーチした内容であったことです。初めは管理職研修について相談させていただいていましたが、坂田さんからは管理職と経営陣も含めた実習型のプログラムにした方が効果がでると思う、とのアドバイスをいただきました。「こういう研修を管理職に受けさせよう」という上位下達のものではなく、経営陣も巻き込みながら知識を共有する内容である点が、私の中で大きく響き、「これに乗ろう」と方向性が決まりました。研修後の変化ー研修を受けられて気づいたこと、発見などはございましたか?経営方針や方向性が定まっていないこと、会社全体として様々なことに対する知識が不足していることなどが、研修の過程で改めて課題として感じられました。経営戦略や事業計画策定前に実施したSWOT分析では、参加者は危機感を覚えている一方で、経営に関する分析の手法自体を十分に理解していないことにも気付かされました。そのため、方針(戦略)を部門で実施するための具体的な戦術が、明確な根拠に基づいた構造になっていないこと。また、取扱い商品には自信をもって販売できる反面、メーカーではないため、価格競争に弱い面などもわかりました。ー研修プロジェクトを振り返って、どのような感想をお持ちですか?私自身、とても勉強になりましたし、やりがいを見つけることもできました。また若手30代・40代の課長職からは、「経営のことを何も分かっていないと自覚した」「数字の見方や法律など、知識をもっと身につけたい」「このままでは将来的に怖い」といった声が自発的に出るようになってきました。一人ひとりの変化が見られたこと、経営ということに対して課長職の意識が向き始めたことは、すごくありがたかったなと思っています。研修プロジェクトが始まる以前より、課長職で集まり話し合う機会はありました。以前は「手が回らない」「どうやって時間を作るか」といったテーマが主だったのが、研修プロジェクト実施の過程で、時間を作るのは大前提の話に。その上で「戦略をどうやって考えていくか」「この前の研修課題の進捗は」と話し合いのテーマが格段に変わっていったことは、この研修プロジェクトに取り組んだ効果と言えると思います。何よりBottoKさんが研修プロジェクトに入って下さったことで、経営陣と管理職とのコミュニケーションをより円滑にはかることができたのでは、と感じています。経営陣と管理職とでは業務範囲も役割も異なり、また日頃からお互いの仕事ぶりや悩みも見えない部分があるため、様々な社員たちの意見を坂田さんが中立的な立場で発信して下さったことは、とてもありがたかったですね。緩衝材のような役割も担っていただいたと思います。今後についてー今回受けられた研修プロジェクト、どのような企業様にお勧めできそうですか?BottoKさんは「戦略」「戦術」と「具体的な手法」を、とてもわかりやすくお話いただけました。経営が特に厳しい状況ではない、売れ行き商品もある、強みもある。しかし何をどう活かしたらいいか分からない、といった漠然とした課題を抱えられている企業様。また2代目3代目と事業継承したけれどもこの先どう事業を展開していけばいいのだろうか、といった課題を抱えられている企業様などへは、特にお勧めできるかなと感じています。ー今後、受けてみたい研修などございますか?合宿型で缶詰になって受ける研修ですね!一般的な研修では1、2時間と時間的に制限があるので、なんとなく習得できた、前進できたという感覚で終わってしまうこともあるかと思います。合宿型であれば、より積極的な、深く掘り下げた議論や学びができると思います。社内では、互いの業務・取り組み・価値観が十分に伝わっていないと感じています。そこで、経営陣と管理職がこの合宿型研修に合同で参加し、まずは価値観やビジョン、各々が業務上で抱えている課題などを共有して行きます。さらに業務に対する姿勢を理解し合った上で知恵を絞り、積極的に皆で関わり合い、取捨選択をしながら方向性を決めていく、そのような研修があれば是非受けてみたいと思いますし、今、会社にとって必要なものではないかとも感じています。ー御社の今後の事業展開について、お聞かせください基本戦略の一つに、利益率の高い生殖工学試薬の海外販路拡大と代理店の開拓があります。できることをまずは始めようとなり、代理店への現状確認や調査などは今年の1月から既に実施し、動き始めています。そして2つ目は、実験動物販売の卸業者ではなくお客様のパートナーとしての立場を確立させていく、というものです。実験動物を扱う際の細かい規制や法律の知識をお客様に提供し、パートナーとしての役割を増やしていく。また動物実験においてこれまで蓄積してきたデータや、実験手技のノウハウなどをお客様のニーズに先回りして提供していく。そのような関係性を築くことで、九動としての企業価値も高まっていくのでは、と思っています。また、新規事業の方向性の一つ、シャツの仕入れ販売が立ち上がりました。販売先や販売計画など、営業部門を中心に事業が動き始めています。管理職研修は引き続きやっていきたいです。坂田さんの受け売りではありますが、経営戦略と人事戦略をしっかり紐付けすることが企業としてまさに今、取り組まないといけないことだと思っています。BottoKさんに引き続きサポートいただきながら、やりがいを持って取り組んでいきたいと思っています。※掲載内容は取材当時のものです。