「評価に納得できず、翌日会社を休んでしまう社員もいました」—— 主観的な評価が常態化していた製造現場で、新井様は長年、評価のあり方に問題意識を持ち続けていました。評価する側・される側の双方が納得できる仕組みをつくりたい。その思いからBottoKへの支援依頼を決断し、約一年をかけて人事評価制度の構築に取り組んできました。今回はその経緯についてお話を伺いました。社名:シンエイメタルテック株式会社 (Webサイトはこちら)業種: 金属板金加工(一般産業用機械部品の製造) 従業員数: 50名(2026年2月現在) 課題: 人事評価制度の未整備 都道府県: 佐賀県 取材にご協力いただいた方: シンエイメタルテック株式会社 専務取締役 新井 広夫様「困ったときの駆け込み寺」と呼ばれる、創業約60年の板金加工メーカーー 会社概要について教えてください弊社は1967年(昭和42年)に創業し、1971年(昭和46年)に有限会社伸栄工業所として設立しました。佐賀県神埼市に本社を構える板金加工メーカーです。現社長の田原は2代目で、創業から約60年にわたり事業を続けています。従業員は現在50名、うち約7割が現場スタッフです。製造現場を担うメンバーを軸に、営業や総務・経理といった部門が連携しながら会社を支えています。主な事業は、鉄やステンレスなどの金属板材を切断・曲げ・溶接といった工程で形にしていく板金加工です。こうした技術は、台所の流し台やスマートフォンの部品、車の外装など、生活に身近な製品にも使われていますが、弊社が手がけているのは一般産業用機械に組み込まれる部品が中心です。取引先の多くは製造業の企業で、神埼市を中心に佐賀・熊本、遠方では山口県あたりまでのエリアに広がっています。大規模な広告宣伝は行っていませんが、技術力や納期対応力を評価いただき、お客様からのご紹介を通じて取引先が広がってきました。「困ったときにはシンエイさんに相談してみよう」と声をかけていただくこともあり、そうした信頼の積み重ねが現在の取引関係につながっていると感じています。ー 新井様の現在のご担当について教えてください総務・経理・人事など、社内の管理業務を幅広く担当しています。現在は専務取締役も務めており、経営面にも携わる立場になりました。もともとは販売・営業畑の出身で、2018年に弊社へ入社しました。ものづくりの分野は未経験なため、機械を使った加工や手作業で部品を仕上げていく現場の仕事には、今でも尊敬しています。自分には簡単に真似ができない領域ですね。納得感のない評価が、人をこぼれさせていたー BottoKの支援を受ける前、どのような課題がありましたか?当時は、人事評価制度と呼べるような明確な仕組みがなく、賞与や昇給の判断は課長職以上の役職者の感覚に委ねられていました。そのため、評価が人に依存する状態になっていました。具体的には、各管理職がそれぞれ部下を評価し、部署ごとに評価の高い社員を挙げていく形です。その中で順位付けを行い、結果をもとに賞与の原資を配分するというやり方でした。事務所と現場では仕事の内容がまったく異なるにもかかわらず、それぞれの業務に応じた評価基準はありませんでした。そのため、判断は各管理職の物差しに委ねられていたのです。さらに、全員を一列に並べて評価しようとすること自体にも無理がありました。最終的には、言葉の強い管理職の評価が通りやすい状況でした。ー 職場ではどのようなことが起きていたのでしょうか?当然、不満の声も出てきました。「なぜあの人より自分の評価が低いのか」「仕事の一部分だけを見て判断されているのではないか」といった声が広がっていきました。社員にとっては、納得しづらいものだったと思います。結果として、「上司に見えているところだけ頑張ればいい」という空気も生まれていたのかもしれません。また、会社として何を期待しているのか、どこを評価しているのかを、管理職から部下に伝えるフィードバックの機会もほとんどありませんでした。評価の結果を受けて、翌日に会社を休んでしまう社員もいました。このような出来事は一度だけではありませんでした。また、「ここで頑張り続けた先に何があるのか分からない」という声が、退職理由として届くこともありました。納得感のない評価が続けば、人は育たず、やる気も生まれません。どうにかしなければいけないと、強く感じていました。「現場を直接見てもらわないと、形だけの制度になってしまう」— BottoKに決めた理由ー 人事評価制度の構築支援を導入した経緯を教えてください数字の面から会社の状況を見る機会が増え、人事評価制度の必要性を改めて強く感じるようになりました。設備投資のように目に見えるものではありませんが、企業が長期的に成長していくためには欠かせない仕組みだと思ったからです。自分なりに改善を試みたこともありました。360度評価を導入したこともあれば、全社員の評価順位を社内に公表したこともあります。その時はすごく揉めましたね。いずれも定着せず、また元に戻ることの繰り返しで、自分の力だけでどうにかできる問題ではないと骨身に染みました。そこで社長には、評価制度が会社にとってどれだけ重要かを伝え、外部の専門家の力も借りながら制度づくりに取り組ませてほしいと強く訴えました。ー 複数社の中からBottoKを選んだ理由は?BottoKが佐賀県工業会で登壇したことをきっかけに、ご縁があってお話を伺うことになりました。同時に、他の数社にも相談しながら比較検討を進めました。いくつかの提案を受ける中で、オンラインで完結するスタイルや、評価管理システムとセットで提案する会社が多いと感じました。ただ、私たちが求めていたのはシステムではなく、自社の状況に合わせて制度を一緒に考えてくれる支援でした。一括りに製造業といっても、会社ごとに仕事の内容は大きく異なります。「とにかく現場を見てほしかった」というのが、私たちの率直な思いでした。BottoKには弊社にお越しいただき、直接説明を受けたことで、現場のことをしっかり理解してもらえると感じました。そうした過程を通じて、制度を作るだけでなく運用まで含めて伴走してもらえると思えたことが、最終的な決め手になりました。「人・組織への思いを言語化」からスタートー 支援の流れや実際の取り組みを教えてください人事ポリシーの策定からスタートしました。会社としてどんな人材を求めているのか、どんな組織でありたいのか、思いのままに伝えたことをBottoKが丁寧に言語化してまとめてくれました。自分たちの考えがここまで体系的になるのかと、大変驚いたものです。完成した8つの人事ポリシーには、同じやり方を繰り返すことが「正」になりがちな現場だからこそ、伝統を尊重しながらも新しい視点を持つ姿勢を大切にしてほしい、という思いも込められています。現在は朝礼でも共有しながら、社内への浸透を進めています。会社や社員に対する思いを言語化していく過程では、それまで意識していなかった面にも向き合うことになりました。制度づくりでありながら、会社として何を大切にするのかを見つめ直す機会にもなったと感じています。ー 進めていく中で、苦労したことはありましたか?評価項目の設計については、職種ごとに異なる評価の配分など、私だけでは把握しきれない部分も多かったため、現場のメンバーにも協力してもらいながら作り上げていきました。評価を行うのも、その結果を受け取るのも社員ですから。一方で、スキルマップについては全くの専門外なため、仕事を一番よく分かっている現場に任せる形にしました。ただ現場では、体を動かして仕事で示すことに慣れているため、理屈立てて考え、それを言葉にして整理することに少し萎縮してしまうような雰囲気もありました。また、忙しい中で「なぜ今これをやる必要があるのか」という空気があったのも正直なところです。それでも、会社としてなぜこの取り組みが必要なのかを、できるだけ噛み砕いて丁寧に伝え続けていくことで、少しずつ理解が広がり、現場も主体的に関わってくれるようになったと感じています。やっている仕事はそれぞれ違いますが、現場と管理側がワンチームとして動かなければ、会社としては機能しません。それぞれの専門性を尊重しながら役割を担うこと、いわば「餅は餅屋」で進めていくことの大切さを改めて実感しました。ー 評価制度の運用に向けて実施した研修が、とても盛り上がったとか?評価制度の形が整い、いよいよ運用に乗せるタイミングで、管理職に向けた「部下の目標設定」に関する研修をBottoKに実施してもらいました。これが意外な発見でした。普段の研修では、意見を発言する社員はほとんどおらず、今回も静かな時間になるだろうと思っていました。ところが、目標設定の具体事例をもとにしたグループワークで、各自の答えを共有する時間になると、あちこちから意見を交わす賑やかな声が聞こえてきました。「こんなことを考えていたんだ」と、新たな一面を知り嬉しく感じる一方で、社員たちの声を引き出せていなかったことに気づかされました。講師である坂田社長の進め方はさすがだなと、少し悔しくもありましたね。まずは「対話の機会創出」から。それだけで大きな一歩ー 社内の変化は感じられていますか?制度の運用は今まさにスタートを切ったばかりです。研修を経て、早速管理職と部下による1対1の目標設定ミーティングが始まっています。社員それぞれが取り組んでいることなので、どんな話をしたか、どんな目標を立てたかなど、細かいところは現場に委ねており、詳細はまだ把握していません。今はとにかく、上司の思いを伝え、部下の声を吸い上げる場がようやく生まれたこと自体、大きな変化だと感じています。こうした対話を重ねていくことで、何かしらの変化が生まれるのではないかと思っています。「めんどくさい」「なんでやるの?」という声が上がることも承知の上です。それでも、「まずはやってみよう」とお願いしながら進めています。運用してみて不備があれば真摯に受け止め修正する、という姿勢で進めています。本当に小さな一歩ではありますが、ついに踏み出せたと思っています。「骨を埋めてもいいと思える会社」を目指してー どのような企業におすすめできますか?賃上げが叫ばれる中で、一律に給与を上げていくことは中小企業にとって簡単ではありません。だからこそ、限られた原資をどう配分するのか。その判断軸となる制度整備が重要だと感じています。評価や賃金の基準が曖昧なままでは、「何を頑張ればいいのか」「将来どうなるのか」が見えにくくなり、人材の定着にも影響してくるのではないかと思います。逆に制度が整っていれば、給与の見通しも含めて社員に示すことができ、人材確保が難しい中で企業としての一つの武器にもなるのではないかと感じています。人事評価制度や賃金制度の必要性は感じているものの、社内だけでは設計が進まない。そうした企業にとっては、専門家と伴走しながら進めることも一つの選択肢になるのではないかと思います。ー 今後の展望を教えてください制度がようやく整い本格的な運用はまだ始まったばかりで、よちよち歩きの段階です。これから必要に応じて、修正や調整が必要な部分は多いと感じています。この制度を通じて、一人ひとりがきちんと認められていると実感できる組織にしていきたいです。評価が良かったときは、それに甘んじるのではなくさらに高みを目指していく。評価が振るわなかった場合は、何が足りなかったのかを見つめ直し、次の成長につなげていく。そうした前向きな循環を生み出していきたいと考えています。人は会社にとって何より大切な宝だと思っています。その育成に本気で向き合い、人の成長が、ひいては会社の成長につながっていく。骨を埋めてもいいと思える会社づくりを目指していきたいです。※掲載内容は取材当時のものです。