佐賀県佐賀市に本社を構える株式会社戸上デンソーは、配電盤の総合メーカーとして国内外のさまざまな地域へ製品を届けています。「曖昧な基準による人事評価」に課題を感じていたと語る同社代表の古賀様。BottoKの研修を受講した経緯、その後の変化についてお話を伺いました。社名:株式会社戸上デンソー(Webサイトはこちら)業種:製造業従業員数:132名(2024年9月現在)課題:管理職教育都道府県:佐賀県取材にご協力いただいた方:株式会社戸上デンソー 代表取締役 古賀 和弘様株式会社戸上デンソーについて72年の歴史を持つ、佐賀の配電盤メーカーー 企業概要について、教えていただけますか昭和27年に戸上電機製作所の製造サービス部門として発足しました。平成13年に戸上電機の配電盤部門を吸収し、今日に至っています。2024年9月で創業72年になります。主な事業内容としては、お客様の要求仕様に合わせた各種配電盤の設計から製作・加工、組立、検査までの全工程を自社で行っています。配電盤業界における中堅規模の企業では、組み立てだけを行われる場合が多いのですが、弊社は電気機器を収納するための筐体(キャビネット)も一から製造し、電気部品の組み込みまで一貫生産している点が特徴です。筐体の鉄板切断・曲げ加工・溶接・塗装といった製造工程を、同じ敷地内にある自社の板金工場で一貫して行っているので、設計・仕様の変更や追加など、お客様の要望に臨機応変に対応することができます。弊社の製品は、日常生活ではあまり目にする機会が少ない設備ですが、例えばビルや百貨店の電気室などに設置されている縁の下の力持ち的な存在です。戸建てや小規模施設向けではなく、大規模施設向けの大きな製品を扱っているのが特徴です。日本全国のお客様とお取引がありますが、特に京葉・京浜工業地帯を含めた関東圏のお客様が多くを占めています。主に、プラントメーカー様や石油会社様、最近では化学メーカー様や電力会社様などに商品を納めさせていただいております。数は多くはないですが、商社を通じてクウェートや東南アジアなど、輸出もしており、現地での据付調整や改造の際に、弊社社員が年に2回ほど出張しています。ー 戸上電機製作所のグループ会社の一員と伺いました戸上電機製作所は弊社の本社になります。グループ会社は弊社含めて8社ほどで、コーポレートアイデンティティはグループ会社で共通となっております。弊社は本社と同じ敷地内にあり、あわせて500名以上が日々働いています。同じ食堂を利用しているため、昼休みは毎日、大変な賑わいです(笑)。私自身も約30年間、戸上電機製作所に在籍していましたが、56歳で戸上デンソーへ異動となり、約1年前に代表に就任したところです。同じ敷地内ですので、さほど違和感というものはありません。技術職が中心、だからこそ充実の資格取得支援制度ー 社員の方々についても、教えてください現在、社員は約140名在籍しており、平均年齢は41.6歳です。19歳の若者から年配の方まで幅広く在籍しており、年齢に偏りなくバランスは良いと思います。強いて言えば、50代がやや多い状況ですね。設計や製造、品質管理などの技術職がほとんどを占めており、人事総務の担当は数名で、男女比は約5:1と男性が多い会社です。ー 社員教育や福利厚生などはいかがですか?社員のスキルアップを支えるために、資格取得制度を強化しています。工業高校出身者が多いため、入社時に電気関係などの資格を保持しているケースもありますが、入社後もさらに成長してもらうことを目指しています。会社に必要な資格を取得した社員には給与へ反映させ、受験料や合格祝い金も支給しています。配電盤の組み立て、板金、製図などの業務において技能の習得レベルを評価する「技能検定」という国家検定制度がありますが、試験に合格すると「技能士」として認定されます。「来社されたお客様に、『この工場で従事している作業者は全員が技能士です。どうぞご安心してお買い求めください』 と言いたい。」、そう社員に伝えて受検を鼓舞しています。福利厚生のひとつとして、社員が仕事とプライベートを両立し、より充実した生活を送れるようにするため、会社としても有休取得を推奨しています。弊社では「一斉有休」という制度があり、年間で3日間、会社全体で有給休暇を取得する日を設定しています。これ以外にも、病気や緊急時だけでなく、家族旅行や趣味、自己研鑽のために気軽に休みが取れる環境を目指しています。抱えていた課題曖昧な評価基準、部門間における評価の偏りも課題ー 御社が抱えていた課題とは、何だったのでしょうか?5年半前に着任してすぐに、退職者がとても多いという現状に直面しました。表立って意見を言ってきたり、何か訴えてきたりする社員はほとんどいなかったのですが、退職には必ず何かしらの不満や理由があります。そこを汲み上げきれずに縁が切れてしまった社員に対し、会社として力不足を感じました。当時、人事評価のあり方について改善が必要だと強く感じていました。頑張った人や成果を上げた人を正当に評価し、課題がある人には適切なフィードバックや指導を行う、そういう制度でなければなりませんが、評価者の主観が評価に影響し、部署により評価に偏りが出ているのが課題でした。例えば、ある部署では「S評価」や「A評価」が多く付けられている一方で、別の部署では「B評価」や「C評価」が目立つといった状況です。部門間で評価の差があまりにも大きいと、どうしても調整する必要が出てきます。人事担当者とも「これだけ調整が必要だと、調整者によっても評価が左右されてしまう。」という危険性を話していました。評価が人によって左右されるのは、会社として大きな課題だと感じていたのです。ー 具体的に、どのような問題が見受けられたのでしょうか?以前の人事評価制度は評価基準が曖昧で、個人の感覚に左右される部分が多いと感じていました。着眼点のリストや要素定義といったベースはあったものの、「上位等級として申し分ない」、「現等級として物足りない」や、「詳細な知識を有している」、「大まかな知識を有している」、というように、各等級により具体的に何が求められているのかという点でも、非常に漠然としていたんですね。また評価をするのは「人」ですから、どうしても厳し目の人、寛大な心持ちの人、と「人」によって評価が変わってしまう、という問題が生じていました。個人の判断に余地が残る制度となっていたため、評価者の基準を統一し価値観を共有する、明確な基準を設けて評価の平準化を図る必要性を強く感じていました。基準が曖昧だと、評価に対して疑問を持たれたときに適切に説明することが難しくもなります。評価基準の問題、評価者自身の問題と、両面での問題があると感じていました。BottoKとの出会い多彩な研修プラン、納得感のある価格設定ー BottoKとの出会いを教えてください佐賀市の工業会の集まりに、BottoKの坂田さんと井手さんがお見えになられていて、お話ししたのが最初の出会いです。人事評価の課題についてご相談したところ、BottoKでも研修を幾つか提供されているとのことで、具体的にお話を伺うことになりました。本社でも各種の研修があり、必要に応じて受講することもできるのですが、本社の状況に応じた内容やレベル設定ですので、弊社の社員たちは負担に感じたり、モチベーションを損なうこともあるかと。やはり、専門の研修機関を活用して、外部の講師に実施してもらい、自社の規模やレベル、課題に合った研修内容を受講したいと思っていました。ー 研修導入の決め手となったポイントは何でしょうか?研修内容がとても多彩でした。会社の抱える課題や必要な支援についてご相談したところ、いくつかのご提案をいただきました。その際、「これはまだうちには早いかもしれない」、「レベルが少し合わないかな」と検証しながら、柔軟に受講内容を組んでもらえたことが大きなポイントでした。選択肢を多くご提示いただき、最終的には自社に最適なプランを選択することができました。形だけの教育では意味がありません。実施した研修がどのように結果に結びつくか、効果を期待できた点も大きかったです。また、内容に見合った納得感のある価格で、「これならまず1回試してみよう」と思わせるものだったと思います。社員の反応や研修後の変化を見て、前向きな意見や良い成果があれば継続を考えよう、と自然に思えました。他社との比較も必要かと頭をよぎりましたが、迷っている時間も惜しいと感じていました。弊社としても、永遠にBottoKさんを頼り続けるわけにはいかないと考えています。ただ、社員一人ひとりの成長に合わせて、必要な教育や研修を適宜組み合わせていくことが重要だと思うんですね。ご提案いただいたプログラムは、ベース作りには良い機会になると思いました。研修について人事評価者の問題点を見直す、気づきと改善ー 研修「評価者のための人事評価の心得」は、いかがでしたか?実際に人事評価をする管理職と、近い将来評価する側になる若手リーダーとを合わせ25名が受講しました。研修は弊社にて開催していただきました。研修内容は、「評価者の心構え」、「評価者の誤差」というように、的を絞った内容で講義をしていただいたので、各担当者はそれぞれが自分ごととして捉えられたのではないでしょうか。 「直前の行動・結果に引きずられる」、「実態より、甘く/辛く評価をしてしまう」などの内容は、「これは自分のことだろうか」とハッと思わせる事例もあり、反応は良かったと思います。また、弊社は全国にお客様がいらっしゃることから、定期メンテナンスや仕様打ち合わせなどの出張が多く、職場のメンバーがなかなか揃わないので、集合研修というものを受ける機会が少なかった会社なんです。まずは一同に集まり研修を受けること、そのような機会に慣れることから始めて行きたいと考えていましたので、良いきっかけになりました。 何より2時間という時間設定だったので、業務を調整しつつ研修の時間は集中して受講できたことも良かったと思います。研修後の変化人事評価シート改訂のきっかけに、評価結果にも変化がー 研修後の変化などはありましたか?研修後に実施した人事評価の結果に、大きな変化が見られました。それまで問題視していた評価のばらつきなどが、だいぶ改善されたと感じましたし、部門間の大幅な調整は必要としない結果になりました。ー 早速変化がみられたんですね。研修以外にも、改善に向けての取り組みはあったのでしょうか実はBottoKの研修を受講したことをきっかけに、人事担当者が評価シートの内容を大きく変更しました。ある意味、背中を押していただいた形ですね。それまでも試行錯誤しながら少しずつ人事評価の見直しを進めていたのですが、なかなかうまく機能せず、人事担当者と「どうにかしなければ」と話し合っていたところでした。BottoKの研修後に、改めて人事評価シートの精査に着手しました。ChatGPTも活用しながら、曖昧な表現はわかりやすいものに変更し、また自社の業務内容に即した評価基準になるよう調整しながら改訂を進めました。ー 人事評価シート改訂版は、スムーズに導入されましたか?研修受講から人事評価シートの改訂、実際の評価に至るプロセスが非常に効果的だったのではと思います。研修を受けずに突然評価シートが改訂されていたら、評価者たちは意図や目的を理解できなかったと思うんですね。研修で評価に関する課題を学んでいたため、改訂された評価シートを使用して評価を行う際に「こういうことか」、と知識と実務がつながったのではないかと感じています。研修を受講したこと、それに伴い評価シートを改訂したことで、その後の人事評価において変化を実感したところですが、評価結果の誤差に関しての改善度合いを例えるなら、これまで30点くらいだったものが、70点くらいまで上がった印象ですね。ただ、今回は研修直後の人事評価ということであり、本来の人事評価は半年間の行動・成果に対して行うものなので、終わりよければ全てよしではありません。半年間に渡って記録をつけることなども実施していないので、まだまだこれからです。次回以降の評価結果が楽しみです。人手不足の中小企業こそ、他社リソースの活用へー BottoKの研修を、どのような企業へおすすめできそうでしょうかやはり中小規模の企業ではないでしょうか。大手企業は人事部門も充実しているでしょうから、社内研修の講師をするにしても人材は用意できると思います。ただ中小企業となると、人も足りず講師を担当するのもなかなか大変だと思いますので、そういう意味でも外部の力を借りて実施するのは良い方法だと思います。各企業が抱える課題に合わせた提案が期待できる点でも、お薦めできます。実際に懇意にして頂いている企業数社に紹介させていただきました。大きな企業様もあれば小規模な企業様もありますが、共通しているのは社員を大切にしている会社であること、また社長自身がやる気を持って取り組んでいたり、人材育成について悩みを抱えていたりしていらっしゃるところです。今後について継続的な学びの場を、挑戦への環境づくりー 今年前半は、BottoKの研修を受講予定とのこと。研修を通じて、社員の方々に何を期待しますか一人ひとりが使命感を持ち、目標に向かって知識を深めながら、自ら成長していってほしいと願っています。「井の中の蛙」ではありませんが、弊社は佐賀という田舎にあります。周囲に同業他社も少ないため、社員の中には自宅と会社を往復する日々、現状に満足している人もいるかもしれません。ところが、会社としては日本全国の企業と競争しているのですから、成長しなければ生き残れません。また、歴史が長い会社のせいか、年功序列で職位が上がっていくという風土があったかもしれませんが、今の時代はそういう訳にもいきません。だからこそ、社員が積極的に学べるよう、学びの場や研修の機会をどんどん提供していきたいと考えています。これまでも1~2日の単発研修や、月2日×10ヶ月間の長期研修など、ちょこちょこ機会は提供しています。研修案内の際に「先着1名(要報告書)」と記載して社内にメール発信すると、積極的に手を上げる社員もいて、短期間に参加者は決まります。参加者には「3行でもいいから報告書を書いて提出すること。」と伝えています。仕事で受講するのですから、知識が個人の財産になるのはもちろんですが、社内でも共有する仕組みも整えています。こうした研修は、社員全員が受講できるわけではありませんが、機会は均等に与えています。様々な学びの場を積極的に提供することで、一人ひとりが自発的に学び続ける姿勢を持ってほしいです。また、研修と研修の期間を空けすぎないことも大切だと感じています。評価者研修だけでなく、リーダー研修やマネージャー研修といった、一貫性のある教育体制を整える必要もあると感じています。「人」は財産、社員も企業も成長し続ける会社にー 思い描く、会社の未来の姿を教えてください企業において「人」は最大の財産です。定年が伸び半世紀以上も会社に在籍するのですから、社員一人ひとりが人間的にも技術的にも成長し続けてほしいと思います。年齢にかかわらず、常に「まだまだ成長できる」、「可能性はあるんだよ」、と声をかけ、社員全員が前向きに挑戦し続けられる環境を整えていくことで、社員がやりがいを感じ、社会の役に立っていることを実感できる会社でありたいと思っています。また、もっともっと地域貢献する社員を増やしたいです。地域の清掃活動や町内会の行事に積極的に参加する、また自分の得意分野を何かの役に立てることで、「さすが戸上さんのところの社員はすごいね」と言ってもらえるような社員を増やしていきたい。会社は、そのような人材を育て、地域に送り出すことができる場でもありたいと考えています。一人ひとりの成長が、会社の生産性や収益性の向上だけでなく、地域全体の明るい未来に繋がっていければ良いと考えています。※掲載内容は取材当時のものです。