SAGA DX リーダーズ事例肥前糧食株式会社- まずは、肥前糧食様の企業概要を教えてください肥前糧食株式会社(本社:佐賀県小城市)は、米・卵・畜産飼料の卸売を手がける企業です。これまで主に卸売事業を中心に展開し、JAから仕入れた米を精米・商品化し、スーパーや小売店、病院や学校給食に供給してきました。また、自社の養鶏場で生産した卵を工場で洗浄・選別し、スーパー向けにパッケージングするほか、農家や畜産関係者へ向けた家畜の飼料販売も行っています。これらの事業はほぼ同等の売上比率で展開しており、地域に根差した食の供給を支えています。-SAGA DXリーダーズのイベントに参加したきっかけを教えてください2024年9月に第一回目の「成功事例から学ぶ利益爆増『変革経営者の実践秘話』」イベントに参加させていただきました。DX推進においては、当時の課題感として「どこから手をつけていいかわからない」状態が続いていました。DXのセミナーや情報がたくさんありすぎて、「結局誰に聞いたらいいの?」という状態になっていました。遠方や都心部で開催されているセミナーもありましたが、佐賀県内の身近でDX推進に取り組んで成果を出している経営者の方のお話を聞いてみたいと思って参加したのがきっかけです。(写真:第1回 SAGA DX リーダーズイベントの様子)-参加当時はどのような課題感をお持ちでしたか?当時は、生産性の向上と、卸売を中心としたビジネスモデルそのものに課題を感じていました。「とにかく紙文化が根強く、デジタルツールの導入が進まない。紙の使用を減らしたい」という思いが強くありました。また、取引先が増えるたびに人員を増やして対応していましたが、人員を増やさずに一人当たりの生産性をどのように向上させるかについても、日々模索していました。さらに、卸売を中心としたビジネスモデルでは、どうしても価格競争に巻き込まれ、利益率の低下が避けられません。こうした課題を受け、今後の販売戦略を見直す必要性を強く感じていました。-課題解決につながる出会いやインプットは得られましたか?はい、素晴らしい出会いがありました。3名の経営者の方からそれぞれ異なる視点でお話をいただきましたが、特に印象に残っているのは芹田社長の言葉です。芹田社長は、事業承継時に経営状態が非常に厳しい状況からスタートし、結果的に経常利益を20%向上させたとおっしゃっていました。その話を聞いたとき、私は『どうやってこの結果を達成したんですか?』と思わず声をかけました。その答えは、「事業の多角経営ではなく、1つの事業に集中し、選択と集中を徹底した」ということでした。特に建設業では相場や価格が不透明になりがちだからこそ、徹底的に透明化を図ったと話されていました。自分たちの工数や技術力に対して、どれくらいの金額がかかるのかを明確にし、しっかりと伝えることが大切だとおっしゃっていました。この言葉を聞いて、事業を一瞬で良くするような特効薬は存在しないんだと実感しました。芹田社長の実直な取り組みを知り、『やるべきことを1つずつ改善し続けることが本当に重要なんだ』と改めて腹落ちしました。さらに、芹田社長との対話の中で、「江島さんの事業なら、平川社長の話が役に立つと思う」とのご助言をいただきました。その流れで、3回目のイベントにも登壇された佐嘉平川屋の3代目社長・平川大計さんをご紹介いただきました。後日、平川社長のお話を伺う中で、豆腐をスーパーマーケットなどへ卸すBtoBtoCモデルを主力としながらも、直営店舗の運営や通販事業を拡大し、BtoCモデルへと転換されていることを知りました。ビジネスモデルの転換に悩んでいた私にとって、まさにタイムリーで貴重な学びとなりました。平川社長も同様に、かつては卸売業を主力としていたものの、相手の言い値で価格が決まる状況に苦しみ、値下げ競争に巻き込まれていました。そこで、直営店舗運営や通販へのシフトを決断したそうです。「今でこそ佐嘉平川屋の名前が知られるようになったけれど、10年以上前は見向きもされず、ずっともがいてきた」とおっしゃっていたのが印象的でした。その言葉からも、「事業を成功させるには、地道にやり抜くしかない」という強い気づきを得ました。BtoBからBtoCへのシフトは決して簡単ではありませんが、直売所を強化することで利益率を改善できる可能性があると感じ、改めてその価値を確信しました。(写真:ORISHIMA Soco店内の様子)- 今後の展望について教えてください最も大きな収穫は、平川社長の話を通じて、これまで漠然としていたBtoCへの移行比率のイメージを具体的に持てるようになったことです。事業転換を進める上で、BtoCをどの程度取り入れるべきかの判断に悩んでいましたが、平川社長が「店舗、卸、通販の比率を3:3:3にすることでバランスが取れる」と話されていたことで、当社の事業構成にも応用できると気づきました。これまで当社の事業は99%が卸売でしたが、この考え方をもとに、どのように比率を調整すべきかが明確になり、事業計画をより具体的に進められるようになりました。特に、当社の場合は米と卵の事業比率をこの比率に近づけるため、直営店の運営やECの強化を進めています。なかでも卵は生産から一貫して行っているため、生産現場の様子を直接見ていただけるような環境を整えることが重要だと考えています。そのため、生産者の存在をより感じられる売り場作りを目指し、店舗の改修にも取り組んでいます。当初はDXのイベントという認識で、「紙の削減ができればいいな」くらいの気持ちで参加していました。しかし、芹田社長や平川社長との出会いを通じて、経営の根幹に関わる課題解決へとつながる貴重な機会を得ることができました。事例企業:肥前糧食株式会社本店住所:〒845-0023佐賀県小城市三日月町織島1711番事業内容:米穀・鶏卵・飼料・食材等卸売業取材にご協力いただいた方:肥前糧食株式会社 部門責任者 江島 茜 様