みなさまこんにちは!人事領域に関心がある方は、企業の組織力強化のために人材育成に取り組まなければ!とお考えの方も多くいらっしゃると思います。そのような課題意識の高い方は情報収集を基に自社に合った人材育成の形を模索されると思いますが、結局出回っている情報は汎用性が乏しく、あくまで事例に過ぎないケースが多いため、「一体何から取り組めばいいの?」「自社にはどんな人材育成がマッチしているのか?」という壁にぶつかるのではないでしょうか?今回は、そんな人材育成に課題意識を持たれた方が気になる人材育成の指針「ロードマップ」について、その手順と心得について図を交えながら説明します。目次ロードマップなき人材育成は、目的地と道順がない団体旅行そもそも人材育成におけるロードマップとはなんなのか?抽象的にはなりますが、人材育成ロードマップとは組織が目指す将来像に向けて、必要な人材の育成や研修の方向性を明確にし、段階的に取り組んでいくための計画書のことを指します。端的に表現すると、人材育成の全体像を体系化したものです。抽象的でわかりづらいかと思いますが、一番押さえていただきたいのは段階的に進めるというポイント。一朝一夕で人が育つための環境構築ができるなんて都合がいいことはありません。当然ですが、時間がかかるのです。長期的なプロジェクトの推進のためには、関係者が人材育成のあるべき姿を見失わないようにする必要があります。すなわち、組織が長期的に人材育成を計画し、実施できるようにロードマップを作成する必要があるのです。そもそもロードマップなんて作る時間がもったいないのでは?組織によっては必ずしも必要じゃないケースがあるかもしれませんが、そんなに意思統一が図れている組織にはお目にかかったことはありません。したがって、基本的には「ロードマップはあった方が良い」ものだと断言します。ロードマップなき人材育成は、目的地と道順がない団体旅行。長旅になりますし、そのための準備はやっておいて損はありません。関係者が路頭に迷わないためにも、ちゃんとロードマップを準備しましょう。テンプレートを使ってサクッと作りたい!何事においても参照になるものは大切です。しかし、ネット上に転がっているロードマップのテンプレートを丸っきり真似してしまっては良くないことを、人材育成に関心がある方は直感的に理解されているかと思います。なぜなら、あくまで他社が作った他社のためのロードマップだからです。「上司に言われたけどよくわかんないし、面倒だから他社のものを丸パクリしよう。」なんて行動は控えていただき、イメージを掴んだり、要点を抑えるなど、テンプレードはあくまで参考にする程度にしましょう。ロードマップの効果「活用すれば必ず見返りはある」ロードマップが絵に描いた餅にならない限りはその恩恵はあります。人材育成の方向性を明確にすることができる。人材育成の目標を達成するために必要なアクションを明確にすることができる。研修プログラムや評価方法を統一化することができる。人材育成の成果を可視化し、評価することができる。上記のような効果は得られるかと思いますが、作っただけで終わりにしないように、計画的にプロジェクト推進、運用面も見据えて取り組むことをお勧めします。人材育成ロードマップの作成手順ここからが本番のロードマップ作成の手順です。最低でもこれからお伝えする思想を持って作成に臨むことを推奨します。第1ステップ:経営ビジョンを確立する最初に、企業が長期的にどのような人材を育成し、どのような人材が必要かを明確にする上で、経営におけるビジョンが必要になります。組織が将来的にどのような姿になりたいのか?が組織内で不明瞭なまま情報のインプットを行なっても、その活動は目的に沿ったものではなく、組織力の強化にはつながりません。ビジョンは、組織の方向性を示し、目的や目標の達成に向けた方針を示します。ビジョンは、組織の理念や価値観、文化に基づいて設定されることが多く、その組織が追求する方向性を明確にするためのものです。例えば、ある企業がビジョンとして「社会に貢献する企業を目指す」と設定した場合、人材育成のロードマップは、そのビジョンを達成するために必要な人材を育成することを目指すことになります。また、ある企業がビジョンとして「グローバルリーダー企業を目指す」と設定した場合、人材育成のロードマップは、グローバルに展開するために必要な人材を育成することになります。この段階では、企業のビジョンや戦略、ビジネス環境などを考慮して、必要な人材像を定義します。このビジョンは、ロードマップ作成の基盤となります。第2ステップ:人材育成の目的を設定する次に、ビジョンに基づいて、具体的な人材育成の目的を設定します。例えば先ほどのグローバルリーダー企業を目指す企業を例に挙げると、人材育成の目的は、グローバルリーダーとしての能力を身につけた人材を育成するなどが挙げられます。第3ステップ:求める人材像の設定目的に合わせて、求める人材像を明確にします。「求める人材像」とは、企業や組織が採用や人材育成において求める理想的な人材の姿を表すものです。当然、企業や組織によって求める人材像は異なります。オススメは以下のピラミッド図ような構成で構築することです。基本姿勢経営ビジョンを達成する上で必要な業務・組織への基本姿勢を洗い出します。【具体例】指示ではなく、自らの態度や姿勢でメンバーを引っ張るリーダーシップ様々な変化の中で自分を磨き続ける成長意欲新規事業拠点立ち上げなど、逆境の中でも諦めない精神力経験・スキル経営ビジョンを達成する上で必要な業務経験・スキルを洗い出します【具体例】語学力:TOEIC〇〇点以上、TOEFL〇〇点以上国内外での新規拠点立ち上げの経験複数部門でのマネジメント経験求める人物像洗い出した経験・スキル、基本姿勢に基づき、要約して一文で人物像を表現しましょう。ここまで定義できたら、スキル・経験面について人材育成を施す方針が立てやすいです。採用や人事評価面でもキーファクターとなる求める人材像ですが、ここで注意すべきは「今後の組織を引っ張っていくべき社員」から要素を抽出し、該当する社員に壁打ちしながら作り上げる方法です。自社内の社員ですと、具体的なイメージが湧きやすいですし、関係者間での情報共有もスムーズで、効率よくプロセスを進めることができます。「今後の人材育成で〇〇という育成目標を掲げているんだけど、このテーマにぴったりな社員はいないかな?」と周囲に聞いてみてください。第4ステップ:現状分析組織の人材育成の現状を把握し、改善点を洗い出します。以下の2点を参考に現状を分析しましょう。【人材】今いる社員の中で求める人材像に近しい人材がいるのか求める人材像に対して、社員の中にふさわしいポテンシャルを秘めた、または既に体現できている社員がいるかという点です。既に人材がいるケースでは、ヒアリングを通して既存の人材育成の改善点を明確にしていきましょう。また、求める人材がいない場合は、基本姿勢をベースに社員をモデルケースとして選定し、「どんな経験やスキルを補えば求めている人材像に近づくか?」という観点で、社内の人材育成の改善点を洗い出すのがオススメです。【環境】人材育成の機会として求める人材像を育てるための土壌また、人材育成の環境が整っているかという観点でも現状分析が必要です。例えば、グローバル人材の育成に力を入れたい!にもかかわらず、現状で準備がある育成プログラムがビジネス英会話研修しかない…そもそもグローバルビジネスの経験がある人材がいない…という状況ですと、ほとんど下地がない状態になるかと思います。もちろん、自社内で経験がないことやわからないことは、自社のリソースだけでなく外部に協力を求めることが必要になります。そういった現状の状況を正確に過不足なく把握することが、後に続く人材育成要件の定義や人材育成ロードマップの作成においても重要になります。第5ステップ:人材育成要件定義「求める人材像」と「現状分析」が十分に実施できたら、続いて「求める人材像」と「現状分析」のギャップから、人材育成の要件を洗い出しましょう。主な要件の設定は以下の要素に基づいて検討するのがオススメです。職種のバリエーション:営業、企画、製造、技術、経理、人事など等級:一般職、主任、係長、課長、部長など求められるスキル:人材マネジメント力、コミュニケーション力、ファシリテート力、プロジェクトマネジメント力など求められるスキルに関して、先ほどのグローバルリーダー企業を目指す企業における人材育成育成をベースに考えると、以下のような例が挙げられます。目的:グローバルビジネスにおける基礎を身につける異文化コミュニケーショングローバルマインド国際法国際ビジネス知識目的:グローバル人材のマネジメント力を鍛える異文化マネジメントスキルチームビルディングリーダーシップスキル第6ステップ:人材育成ロードマップを策定する人材育成の要件が洗い出せたら、ロードマップの作成に移ります。以下にオススメの方法を記載しますが、あくまで参考にしていただければ幸いです!横軸:年次や職種といった育成対象者のバリエーション縦軸:スキルなどの育成内容のリストここまで定義してきた要素を振り返りながら、論理的に設計することが必要になります。ある程度の柔軟性は必要補足ですが、ロードマップは、変化する環境に対応するために、柔軟性を持たせることが重要です。計画策定時に、将来的な変化や不確実性に対応するための柔軟性を考慮することが必要です。これだ!と決めつけてしまわず、臨機応変に変更できるようにしましょう。評価制度との連動は動機づけの面で必須人材育成のロードマップを作成したら、人事評価制度を連動させる必要があります。「研修を受けても評価されないんじゃ、通常業務やっていた方がいいじゃん。」と社員に思われてしまっては、せっかくの人材育成体系も機能しません。社内を奔走して作成したロードマップがハリボテになってしまうのは、なんとも悲しいことです。人事評価制度と照らし合わせて、うまく評価項目に反映できたら「研修に進んで参加しよう!」と従業員に意識付することができます。例えば、以下の様なものが挙げられるかと思います。研修の達成度を昇降格の基準として加味する研修での課題提出の内容を賞与に反映させる従業員のモチベーションや成長を促進し、企業の成長や競争力向上につなげる為にも、評価制度の見直しも行いましょう。終わりにロードマップ作成は、人材育成の成功に不可欠なプロセスです。ネット上に転がっているテンプレートで変な要素を抽出したりしないよう、この記事で解説した手順や心得を参考にしていただけますと幸いです。もし、人材育成のロードマップの作成につまづいてしまっている…という状況でしたら、一度弊社にご相談いただければと思います。皆様が適切なロードマップを作成し、人材育成を進めることができるようになることを願っています。