11月26日(火)、SAGA CHIKAにて「第三回 SAGA DX リーダーズ」を開催しました。佐嘉平川屋 三代目店主の平川大計氏をお招きし、事業継承後に直面した経営危機をどのように克服し、10億円を超える企業へと成長させてきたのか、その具体的な取り組みなどについてお話いただきました。この記事では講演内容の概要をお届けしています。コミュニティにご参加いただくことで、講演の全編をアーカイブ動画としてご覧いただけます。ご興味のある方は、ぜひコミュニティへの参加をご検討ください。『事業承継時のドン底状態からV字回復を果たした豆腐屋のビジネスモデルの転換と経営の考え方を学ぶ会』SPEAKER:株式会社 佐嘉平川屋 代表取締役 平川 大計佐嘉平川屋の代表を務める平川です。もともとは運輸省(現国土交通省)に勤務していましたが、IT起業ブームの影響を受け、自らも起業を志しました。その準備期間として実家の豆腐屋を手伝うつもりでしたが、想像以上に厳しい経営状況に直面。結果的に、豆腐屋を継ぐ決意をしました。当社は1950年創業で、佐賀県産の大豆を使った地域性ある商品を全国に届ける豆腐屋です。現在、温泉湯豆腐や豆乳もちを主力商品とし、嬉野市や武雄市で店舗を展開しています。ヒット商品を出すことも重要ですが、根本的に事業構造を変えないと収益は上がりません。今日は当社が取り組んできた構造の変革についてお話ししたいと思います。1. 低価格競争の激化、危機的状況からの脱却豆腐屋を継ぐ前、会社は深刻な危機に直面していました。低価格競争から脱却するため、父は「温泉湯豆腐」の商品を手掛けました。当初は全く売れなかったそうです。しかし、元プロ野球選手の方から「通販で扱いたい」とのお話をいただき、これをきっかけに通販事業をスタートさせました。これが後に、通販を柱とする現在の事業モデルの土台となります。2. 通販事業を軸にした改革私が家業に戻った時、実質的な債務超過に加え、金利負担で利益がほとんど消える厳しい状態でした。事業の立て直しに向け、まずコストを1円単位で削減しつつ、利益率の高い通販事業に注力しました。さらに、ブランド力強化のために「佐嘉平川屋」へ屋号を変更。効率化も進め、梱包作業の内製化や送料の価格交渉などで利益率を改善し、売上は3年間で倍近くに成長しました。3. 新店舗オープン、認知度向上へ温泉湯豆腐の価値向上を目指し、2010年に嬉野店をオープンしました。開店当初は売上不振が続きましたが、新商品を開発し全国展開することで事業は回復。さらに、佐賀県産大豆への切り替えを実施し、地域のブランド価値を一層高めました。嬉野店では、「温泉湯豆腐をメインディッシュとし、その後鍋、最後に雑炊を楽しむ」という新しい食べ方を提案し、温泉湯豆腐の認知度も向上させる役割を果たしています。しかし、売上拡大に伴い製造量の限界や品質管理問題が課題となり、ISO22000認証を取得するなど属人的な製造体制からの脱却を図り、生産性と品質を向上させる基盤を整えました。4. 社名変更、デザイン統一、リブランディングの効果事業の成長に伴い、設備投資や働き方改革も進めました。2018年には新工場を稼働させ、生産性向上と労働環境の改善を実現した一方で、従業員の大量退職や自然災害(2019年、2021年の水害)といった試練にも直面しましたが、リブランディングや通販体制の強化により業績を回復させました。特に2022年の武雄温泉店の開業以降は、各メディアから企業として取り上げていただくようになり、当社ブランドの世界観を広げる店舗の位置づけとなっています。2023年1月、有限会社平川食品工業から株式会社佐嘉平川屋へ社名を変更。専門家に協力を依頼したり待遇改善、ブランディング強化も相まって、スタッフ採用が順調に進み、採用環境が大幅に改善しました。4月には商品のデザイン統一や値上げを実施。値上げは需要抑制を目的としていましたが、ブランディング効果により需要は減らず、値上げ分がそのまま利益に。手間のかかる商品を終売したりなど製造負担も軽減したことで、効率的な生産が可能になりました。結果的に販売も順調で、現在は予想以上に好調な売れ行きを見せています。5. 佐嘉平川屋の挑戦とビジョン「佐賀を豆腐の聖地に」というビジョンの元、量販店に依存しない収益構造を構築し、労働環境も整備しながら、豆腐屋を普通の会社にしていく。次世代の豆腐屋のロールモデルを目指していきたいと思っています。将来的には、滋賀のラコリーナや長野の小布施堂のように、豆腐を求めてたくさんの人が佐賀を訪れる場所に、将来的には「豆腐を食べるために来て、ついでに泊まる」、オーベルジュのような施設を作りたいと思っています。また、国内ブランドの確立を基盤に、海外展開にも挑戦していく計画です。コミュニティにご興味のある方は、専用ホームページで詳細をご覧ください!「SAGA DX リーダーズ」webサイト